ルールの作り方とあり方

 好きな日に働き、嫌いな仕事はやらないのですが、パプアニューギニア海産には細かなルールが山ほどあります。

 選べる自由と、ルールがないことは全く別問題のようです。

 例えばこんな細かいことでルールを作ります。『挨拶するタイミング』『頼み事をする時に名前を呼ばない』『ありがとうを言わない作業』『私語は社員がいる時だけ』など。

 最近できたのは『事務所のドアを開ける時ノックをしてはいけない』。

 それぞれの理由に関してはまたの機会にしますが、この細かいルールから、大雑把なルールまで誰が作っていると思いますか。

 『フリースケジュール』や『嫌いな仕事はやってはいけない』はパプアニューギニア海産の働き方を大きく転換するために私が考えましたが、工場内の作業に関してのルールは、基本私ではありません。

 さて、私は面談をとても大切なものと考えています。。

 年に2回はパート従業員全員と個別面談します。それ以外にも気になることがある場合は『ちょっと話がある』と声をかけてもらい、後日時間を取ってゆっくりと面談をします。1回の面談は1時間前後が平均的ですが、長いと2時間を越すこともあります。

 実にいろんな話をしてくれます。その話を軸にルールを作ります。

 取材などで、よくそこまで細かく人の心を捉えたルールを作りますねと言われることがあります。でも実際は面談での従業員の話を反映しているにすぎません。

 もちろん一人の話だけでルールを作っていくのではなく、その話を頭に入れた状態で日々の作業を繰り返し、他の従業員にも話を聞きながら、ルールを作る必要があるかを探ります。

 その中でルールを形作っていくのは私ですが、最近はそこさえパートさんからの意見を採用することが多くなっています。

 最終的にルールを作ることになった場合は、全体ミーティングで経緯を話し、期間限定で試します。『まずは2週間だけやってみます。よくなければ元に戻します』と。新しいルールを作ったり、改革するのなんて、期間限定で気軽な気持ちで始めればいいと思っています。

 その面談をする上で、自分に課していることが一つあります。

 それは『自分も毎日工場に入って作業をする』ということです。ほぼ毎日。でも、自分が作業のプロフェッショナルになるためではありませんし、みんなより上手になる為でもありません。

 みんなの言葉や想いを理解する為です。

 現場を知らないリーダーは、せっかくの意見を無駄にするどころか、理解することすらできません。真意まで辿り着けないのです。机上の空論で知った気になってしまうと、下手をすれば真逆に捉えてしまうことすらあります。

 そんなリーダーに真剣に意見を言う従業員がいるでしょうか。

 『どうせあの人に言っても理解できない』『現場の流れも知らないから説明が難しい』となるのは当然じゃないでしょうか。

 従業員が私に求めているのは、技術的な進歩ではなく、自分たちが働きやすい職場を作ることであり、それは争いのない誰もが居場所のある職場であると受けとめています。

 現場に入る事で、間違っても重圧でコントロールしようなんて気持ちを持ってはいけませんし、一番にならなければと自分に重圧をかける必要もありません。

 そしてルールを具体的に作る中でも一つ重要なことがあります。

 もし私が優れたルールを作れる人間だったとしても、それを独断で行なわないということです。きっと、そのルールは結果としては役に立たないものになってしまいます。

 どんなに優れたものでも、押し付けは気持ちの良いものではありません。

 気持ちよくルールを守っていくには、自分たちで考え作り出していくことが重要です。押しつけられたルールというのは人を縛る為のものであり、自分たちで作るルールというのは人の気持ちを繋いでいくものです。

 悪意を持ってやぶる人や、サボる人などはなかなか出てこないでしょう。ルールを作る事が効率や品質にもつながります。いつも言うように、順番が大切です。

 こんな偉そうに書いていますが、私たちも目指しているずにすぎず、ゴールは果てしなく遠い気もします。

 しかし、実はそこに向かっているその過程こそが人が生きる上で重要なことではないか、とも思っています。

パプアニューギニア海産・工場長 武藤北斗

*この文章は2020年2月16日にnoteに投稿したものです。

カテゴリー: ■ ブログ(日々のこと), 工場長また語り始めた パーマリンク

コメントは停止中です。