『今は働いていません』という方の面接が多かったのですが、最近は『今働いてます。けれど、パプアニューギニア海産で働きたい』という人が多くなりました。嬉しいことです。
しかし、その反面私はすごく悩んでしまうのです。
特に社会保険に加入していたり、勤続年数が長かったりすると唸るほどに悩んでしまいます。
なぜなら、今の会社をやめてパプアニューギニア海産で働いたけれど『イメージと違った。あわなかった』と後悔するような状況になることを恐れているからです。もちろん働きやすい仕組みを工夫していますが、それでも万人が満足するわけではありません。
そして結構きつい現場なんです。冬でも冷たい水を使い、暖房もつけず、ずっと立ち仕事。
ですから、前の会社を辞めたことを後悔しながら働く可能性がないとは言えません。あげくにうちを退社となったら、その人の生活にとっては本当に大きなマイナスでしかありません。
それは仕方ないと割り切ることができず、かといって何かいい方法があるわけでもなく、結局は断ることが続いていました。
しかし、昨年11月に入社したAさんは他の会社で働き、社会保険にも加入していました。さらには他県に住んでいたので、うちに入社するには引越しをする必要さえありました。
もう唸って悩みました。面接に来てもらう事すら悩みました。時間も費用もかかりますから。
でも、この大きな変化を前提にしっかりと考えたうえで、Aさんは面接にきました。その心意気が、僕の背中をおしたように思います。
いつものごとくたいした閃きも、発想もないですが、Aさんがうちのパート従業員になり、社会保険に加入するまでの経緯を話したいと思います。
ルールを一つ解除
パプアニューギニア海産には『パート従業員は副業をしてはならない』という時代錯誤のルールがあります。
フリースケジュールという僕らの働き方には必要と思っており、私は頑なに守っていました。
でもこれをAさんには一時的に解除することにしました。
ようするに今の会社に勤めながら、うちにも出勤することを許可しました。いわゆるお試しです。もちろん従業員のみんなにミーティングで事情を説明し、了承を得てからにしました。
会社をチェックしてもらう
週に1回程度でのお試しですが、フリースケジュールも時給も何も変わらない状態での入社。その中で自分の納得するような会社であるかをチェックしてもらいました。
うちのように、よいイメージが先行している会社は、いざ入社した場合に理想と現実のギャップに戸惑うことも予想できます。とにかく全く同じ条件でありのままを見てもらう事を心がけました。
気持ちよく辞めてほしい
このお試しの期間をどの位にするかは、決めませんでした。今働いている会社をトラブルなく、気持ちよく辞めてからうちに来ることが重要と考えていたので、あえて曖昧な感じにしました。
結果的には3か月ほどこの期間が続きました。
私としてはもっと長くても問題はなかったので、のんびり待っていました。ただコロナウィルス で出勤者が少なくなっていたので、社会保険加入のパートさんが3月から出勤というのは、結果的にはうちにとっては最高のタイミングとなりました。
こうあるべきを外す
振り返ってみると、昔の自分にあった『こうあるべき』がいくつも無くなっていることに気づきました。
『社会保険加入が条件での募集だから、すぐに社会保険に入るべき』
『新人にルールを変更してまで対応するのはあまい』
『審査するのは会社側』
『前の会社のことなど知らない、うちの都合優先』
自分が主導権を握ることに価値を感じなくなった時、こうあるべきが外れいろんなことに柔軟に対応できるようになった気がします。
それは結果として、私も気持ちや体が楽になりましたし、人として仕事に向き合うことで、やりがいも高まったように思います。
社会保険加入
前の会社を円満に退社したかは聞いていませんが、引越しも含めて順調に進んだように見えました。
3月中旬から社会保険に加入。面接時の条件での雇用がはじまりました。
これからはほぼ毎日働くことになります。きっと仕事も人間関係も会社との関係も、感じ方や見え方が変わってくると思います。しかしAさんが自分で試し判断し決断しましたから、きっとよい流れで進んでいくのではと思っています。
会社としては引き続き全力でサポートしながら、ともに争いのない職場を淡々と続けていければと思います。
パプアニューギニア海産・工場長 武藤北斗
*この投稿は2020年3月19日にnoteに投稿したものです。