時給アップで品質向上はしない

 パプアニューギニア海産は時給一律 1,000円 です。1日目の人も、6年目の人も。月に数日出勤の人も、毎日来る人も。作業が早い人も、遅い人も。

 一生懸命働いているかが唯一の判断基準であり、会社は一生懸命働こうと思える職場を作る努力をし、従業員は一生懸命働く、だから時給一律というわけです。

 一般的には「この仕事ができるようになったら時給アップ」のような形で差ができます。時給アップがモチベーションアップに繋がると考えた場合、うちのような時給一律では、従業員がやる気をなくしてまうと考えられます。

 また、どうせ時給が一緒なら・・・と、仕事が雑にならないか。品質が落ちるのであれば食品会社にとって致命的な問題では?という声も頂きます。

 昨日見学に来た学生さんと、このことについてやり取りをする中で、あーここが重要だなと感じたことがあり、今日はそのことを書きたいと思います。

わたなべさん

 時給一律というのは、実はフリースケジュールを始める前の2011年から続けています。そして品質は下がるどころか上がっています。

言葉だけでは説得力がないので写真をご覧ください。

まずは今のエビフライの写真です。形もまっすぐで、パン粉もきれいについています。

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そして次の写真は10年ほど前の時給がバラバラの頃のエビフライです。

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 見ての通りボコボコです。本当に昔のお客様には申し訳ないと思っています。

*ただ、これは働き方全体を変えた成果であり、時給だけの問題でもありません。

モチベーションのあげかた

 では、時給アップではなく、何がモチベーションになってこのような品質のよい商品ができあがったのでしょうか。

 答えは単純明快です。

 人間はそもそも「きれいに並べる」とか「丁寧に作る」といったことが好きなのです。

 靴ひもを左右で同じ長さにしたり、砂団子に白砂をかけて仕上げたり、マンガを1巻から順番に並べたり、子どもも大人もそんな一面があるように思います。

 だから私は会社として、みんながその心に秘めている感覚や想いを表現できるような職場にするだけです。それでこそ、真の意味で品質や効率が上がることに繋がります。突き詰めていくと、お金ではないのです。生活をするのにお金は必要ですから、給料を上げていくことに会社として努力します。でも効率や品質を上げるためではないのです。

 そんな職場にする方法は、もう何度も言っている「争わない」ということであり、苦しまずに淡々と自分の仕事ができるということです。私の話は全てがここに辿り着きます。

 そもそも、その作業ができるようになり、時給が上がったとして、その後はどうモチベーションをあげ、継続していくのでしょう。もし人間関係が滅茶苦茶だったら、その先に明るい未来は見えませんし、高いモチベーションが持続している状況というのは幻想にさえ感じてしまいます。

 数十円の差であの人はどうだ、この人はどうだと争いが生まれることの方が、私にとってはリアルな現実に思えてなりません。

 社員ではなくパート従業員という働き方を選んだひと同士が、自分の生活を第一に考えながら、このエビ工場で働く。自分の体調や得手不得手も考えながら、出勤するか、作業するか、自分で判断し行動する。そして会社の業績が上がり、みんなで時給が上がっていくことを目指す。堅実で納得できる時給制度に思えます。

時給と地域格差

 パート従業員の働き方改革というのは、根底から考え直さなければ本当の改革にはなりませんし、まずは政府も含めて非正規雇用が悪いという感覚をなくしていくことが重要と思います。社員がうらやむほどのパート従業員の働き方の柔軟さが必要なのです。

 れいわ新選組が『全国一律!最低賃金1500円「政府が補償」』という政策を掲げています。いろいろと難しいことはあると思いますが、議論していく価値はあると考えます。

 その足掛かりとして一つ提案したいのは、まずは地域格差のある最低賃金を国の補償で統一してはどうでしょうか。

 先日沖縄へ行った時に驚きました。790円でした。

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ここ大阪は964円で、東京は1013円。

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8時間働けば、1日で1,784円もの差が生まれます。金額以外は全く一緒のこのポスターがなんとも皮肉で滑稽にみえます。

 非正規雇用のこれからのあり方を真剣に考えることができれば、今はいろんな理由で働けない多くの人が働けるようになり、人手不足などなくなり、社会全体に活力があふれるでしょう。そして、排除するのではなく、お互いを尊重しあえる心豊かな国になるのではと希望をもっています。

パプアニューギニア海産・工場長 武藤北斗

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