天然エビに関する正直な実際の話  その後 

代表取締役の武藤優の執筆をご紹介します。

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天然エビに関する正直な実際の話  その後 

1999年に執筆した「天然エビに関する正直な実際の話」から13年が経ちました。この間、国内のエビ流通事情には様々な変化がありましたが、私たちのやっている事自体には大きく変わったところはありません。ただ運の悪い事に、昨年発生した東日本大震災により、会社は回復不可能なほどの壊滅的打撃を被りました。然しながら、皆様のご支援・ご協力を得て、現在復活に向けての新たな一歩を踏み出せる環境を与えられました。これを機に、今回もう一度、別の視点からの話も含めて文章にまとめてみましたので、ご一読頂ければ幸甚です。まずは、ざっとおさらいをしたいと思います。

話は36年前に遡ります。当時26歳でした。第二次オイルショックが世間を騒がせている時代でした。大学(長崎大学水産学部漁業学科特設専攻科)は卒業したものの、本懐である漁船の航海士の道は閉ざされていました。やむなく、東京築地の水産荷受、大都魚類株式会社に職を得ました。冷凍エビ課に配属されました。世界各地の冷凍エビの買付けと販売が主な業務でした。生産者とも直接話をする機会がありました。生産現場の厳しさを知り、流通ビジネス内部の矛盾にも直面しました。元来、生産者の側に立って思考する傾向があったためか、生産者の懐へ飛び込みたいとの思いが目覚め、そのための準備として青年海外協力隊に参加し、中米ホンジュラスに漁業隊員として赴任しました。与えられた任務は現地漁民に対する漁船運用・漁具漁法の指導でした。貴重な体験でした。開発途上国と先進国との間にある南北問題を肌身で感じる事が出来ました。任期満了後、縁あって、国際協力事業団のパプアニューギニア駐在としてポートモレスビーに赴任しました。この時期、日本の大手水産会社・商社の支援を得て事業を営みながら、正に自立を目指しているパプアニューギニアの人々と巡り会いました。その自立を果たすための協力者となりました。その後はわき目も振らず、現在に到るまで現地の人々と共に様々の苦難を味わいながらも、生産から流通に至る自前の流通システム作りを目指して来ました。漸くそれらしきものが出来上がりました。安定した完成品ではなく、まだまだ改良の余地はありそうですが・・・。

今日に至るまでこの事業を続けて来られたのは、資源を保有する途上国の産業を支えるマーケットの開発により、生産現場であるパプアニューギニアの人達の次世代への事業継続を可能にし、生産者・消費者双方が将来に渡って利益を共有できる仕組みを確立したい、という思いを持続できたからであります。世間一般には、途上国の都合は二の次で、自分の都合で事業を継続させるか否かを決めているようです。言い換えれば、儲けが出なければ止めてしまうという事だと思います。私達の場合は、事はそう簡単ではありません。途上国の産業の育成と存続が大事な目的であり、それが自らの存続にも大きく影響するからです。良い点も悪い点も、全て理解し合っての共存共栄という事は、本当に難しい事だと実感しています。という訳で、この事業の更なる育成・発展は、今や私自身のライフワークとなっています。

さて、最近のエビ流通事情ですが、皆さんもすでにご存じのように大量の養殖エビが世界中に氾濫し、大手企業はその安定確保と事業拡大に向けて走っています。小さい子供たちや次の世代を担う人々の健康問題、自然環境問題、エネルギー問題などもっと私達が考えなくてはならない問題が山積していて、利潤追求型ビジネスにとっては説明に困る事態が多々発生しているようです。企業の存続にとって利益はもちろん大切です。が、自然を敬いその資源を有効に活用していく努力を放棄して、商品の見栄えやコスト削減のために、化学薬品や食品添加物の世話になるのは止めたほうが良いのでは?と思います。言葉で言うのは簡単ですが、現実はやはり厳しいものがあります。近年世界的に話題となっている原油
価格の急騰問題は、漁業者にとって正に死活問題となって重くのしかかっています。特に私たちの行っているエビトロール漁業では、生産コストの実に60%以上が燃料代として消えていきます。20年前と比べると実質8倍強にもなっていると試算されています。機械に頼れない船上での作業は昔と変わらず、人員削減もままならない。生き残りのための名案は見つかりそうにありません。ただ、これまで同様、品質にこだわり、消費者の方々の信頼にこたえる努力を怠らないことが最善の方策のようです。

一般的には、皆さま消費者にとって天然エビの本当の実態を知る事は大変に難しいし、殆んど不可能と思います。理由はとても簡単です。正確な情報の発信源が存在しないのです。大企業の立場からは、意図的に隠しているのではなく、天然エビの供給源が少なく、数量的にも大きな流通形態を支えるボリュームが無いため、それほど熱心に説明する必要性が無い、という説明になっています。が、実はこれは正しくありません。天然エビに関しては、その存在を消し去り一切の説明をしたくない、というのが本音ではないかと思います。天然エビの良さを説明するという事は、主として流通させている養殖エビはどうなの? 或いは、どちらが良いの? 等と聞かれると答えに困ってしまうからではないでしょうか。
一般には、海外に合弁事業の拠点を有する大手水産会社が主に天然エビを取り扱っています。彼らは同時に養殖エビも大きく取り扱っています。巷に溢れる養殖エビは、育てる場所さえ確保すれば継続的な生産が可能であり、化学薬品・抗生物質・食品添加物を使用することによってコストの削減も可能というとても便利な代物です。とは言うものの、環境破壊や食品の安全性等に関しては、問題が無いわけではないと思います。とりあえずは、国の定める安全基準をクリアーしていると説明されていますが、違反者に対する罰則規定も曖昧な上に、政府としての管理体制も不明瞭でよく解りません。従いまして、提示された情報を手放しで容認するか否かは、私たち消費者の判断に委ねられているのが実情です。
養殖エビの実態を見てみると、初代の養殖ブラックタイガーから、病気に強く生産性も飛躍的に向上した第二世代のバナメイ種に移り、生産量も年々増加の傾向にあります。天然エビ・養殖エビどちらを選ぶかは、消費者の意志に任せるとして、その判断基準となる情報・説明が不足している事は明らかです。

通常、魚介類が流通する水産中央卸売市場から船凍天然エビの姿が消えてかれこれ2~3年になります。えっ? では何故、船凍天然エビの流通は姿を消してしまったのでしょうか???

それにはいくつかの要因が考えられます。運悪くそれらが重なり合い、絡み合ったようです。
①船を動かす燃料代の高騰、しかも半端でない上昇。
②養殖技術の確立により低コスト化が実現した養殖エビ大量搬入の価格面でのプレッシャー。
③流通サイドの都合やリスク回避策による、生産者サイドへの負担増。

上記の①②に関しては容易に理解できる事と思います。最後の③については少し説明が必要と思います。流通サイドの都合・・・という内容を分かり易く説明すると以下のようになります。
私たちが生産している天然エビは、私たちが暮らしている地球の自然の環境から得られる恵みのようなものです。自然環境というものは、人間のためだけに存在している訳ではないので、様々な制約があります。例えば、天候の変化(晴れの日もあり雨の日もある。風の強い季節には漁に出られなくなる。等々)、或いは地球温暖化により海水温が上昇して生息海域が移動してしまう、資源保護のために漁場が閉鎖される、盛漁期と不漁期があって生産量が季節的に変化する、盛漁期にはエビが沢山獲れるが乗組員の疲労がたまり製品の品質保持に苦労する、等が挙げられます。ところが、商品を流通させる人たちにとっては、商品は常に一定の品質のものが供給されて当たり前、が前提です。自然を相手にする第一次産品にとっては、この品質の安定という問題が常に頭を悩ませています。この責任を果たすために色々努力を重ねていますが、根本的な解決策は無く、常に、品質管理に注意を払う努力を継続するという事が、唯一の解決策だと認識しています。即ち、様々な制約と闘いながら生産をしていますが、商品に対するクレームが発生する可能性は常に存在しているという状況は変えられないため、問題が発生した場合には、直ちに原因を究明し、生産現場にフィードバックして対応策を講じるという作業を繰返す事によって、問題の再発を防止するという努力の積み重ねが大切であり、必要であるという事です。養殖エビが存在しなかった1980年頃までは、天然エビがエビ流通の中心で、流通業者は商品の確保に苦労し、長期在庫のリスクを考慮しながらお客様のクレームにも熱心に対応していました。ところが、1980年代初頭から台湾産の養殖ブラックタイガーが勢力を増し、搬入量が増加し始めた頃から流通業界に変化が起こり始めました。またたく間にインドネシア産・タイ産・中国産と広がり、過密養殖の影響等での病気の心配をしながらも、現在では前述のバナメイという品種が主流になっています。この養殖エビの技術革新により、いつでも必要な数量が低価格で確保できるようになったし、同時に見た目に関しての品質クレームも表面上は無くなったため、流通業者の人々にとっては一件落着という形になった訳です。養殖エビの中でも、品質の差別化というものが進んでおり、環境に優しい養殖という奇妙なキャッチフレーズで消費者の心を捉えている物もあるようです。季節的に漁獲量の変化がある天然エビは、生産者サイドが長期在庫を余儀なくされ、マーケットを開拓していかなければならなくなりました。日本の大手水産会社にしても状況は同じです。燃料費の高騰、慢性的な人件費の負担増、低価格化が定着した養殖エビとの価格競争によって事業採算性が見込めなくなり、撤退・廃業が進みました。こうして天然エビのマーケットは日本の水産物中央卸売市場から姿を消したのです。私たちが現在もなお事業を継続できているのは、長年かかって現地の人々を教育・育成し、彼らの自立を目指し、実現できた事と中央卸売市場の流通に100%依存しない、独自の流通システム作りを進めてきた成果だと思っています。

最初に申し上げましたように、昨年3月11日に発生した東日本大震災による津波で、石巻の事務所・工場・その他設備は全て流失しましたが、幸いにも一命を取り留めました。震災直後は、茫然自失の状態で廃業の選択肢も頭をよぎりましたが、皆様の励ましとご支援により大阪府茨木市にて事業再開を決心し、現地パートナーも事業継続が可能な環境に立たせて頂いています。物質的には振り出し以前に戻されたかの感がありますが、長年培ってきた様々の実績・信頼関係という財産が支えとなってくれました。

今後も、初心を忘れずPNGの生産者共々、安心できる製品をお届けし続ける決意であります。
どうか、応援の程、宜しくお願い致します。
尚、天然エビに関してのご質問その他ありましたら、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。
分かる範囲で、正直にお答えさせて頂きます。

平成24年10月 吉 日
株式会社パプアニューギニア海産
代表取締役 武藤 優




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