パプアニューギニア海産では数か月に一度ですが、お取引先のお店・スーパーなどにセールを企画します。
普通の会社とちょっと違うのは、セールをする商品、期間を私たちが決めており、数量や規模に関わらず全てのお取引先に同じ条件で行います。
僕らはお客様より自分たちの利益を追求するダメな会社でしょうか。
そんなことはないと思っています。
僕らはお客様に品質の高いエビを届けるにはどうしたらよいかを常に考えています。と同時にエビをとっているパプアニューギニア現地のことを考え、工場で働く従業員のことを同じように大切に考えているだけです。
以前、手に取ったお客さんが安く買えることが一番大切だと言われたことがあります。しかし僕らはパプアニューギニア現地が苦しまずにエビ漁を継続できることも同じように望みますし、こちら側の都合のために価格競争を強いる気はありませんので、最終的には意見があわず取引をやめさせていただきました。誰かだけが幸せではだめだと思うのです。
自然のめぐみ
天然エビですから、いつも安定的に同じサイズ・種類・鮮度のエビが取れるわけではありません。時には大きなサイズが、時には小さなサイズが、時には鮮度が落ちたエビ(波が荒れている時など)が大量に原料として入ることがあります。そんな時、余剰在庫になりそうな商品を予測しセールの案内をだします。
商品の値段、セールへの価値観
どんな原料も商品もためこまないのはもちろん、正直なところ、なるべくセールをしないように心掛けています。これは商品がつねにギリギリの価格設定ということでもあります。僕らはまわりの流れがどうであろうと、下げられるときは正直に値段を下げます(参考:2018年4月に値下げします)。価格が上がるばかりでは問題があると思いますが、冷凍でも外国のものでも、値段が上がったり下がったり、そしてその理由がはっきりとわかることは買う人、食べる人にとっても重要な情報のように思います。価格やセールに対する考え方が僕はちょっと変わっているのでしょうか。
セールで残業するの?
工場の従業員目線で考えれば、繁忙期にセールをして残業が続くようなことは避けます。工場の稼働率を上げ、売れる時期に無理をすれば会社としての利益は一時的に伸びるかもしれません。しかしそれでは従業員の生活や体や心が疲弊してしまいます。それは結果的に美味しくない食べ物を作って、お店にも、食べる人にもマイナスだとも思います。
季節のイベントを意識しすぎない
ですから僕らは季節のイベントなどに左右されて余剰在庫などで苦しむことはほとんどありません。
年末に大きめのエビを提案できないかとか、頭付を提案できないかと考えることはありますが、漁獲量が全くよめない時期であればきちんとお断りします。適当な憶測で受けて、欠品という形でお取引先や楽しみに待っている食べてくださる皆さんに迷惑をかけるようなこともしません。
どんなに大きな会社にでも、無理なことは無理、大事にしていることは大事ですと言えるように心掛けています。
ちょっと話がずれましたが、これが僕のセールに対しての認識であり、実際におこなっていることです。お金を中心に食を考えるのではなく、いかに食べること、生きること、助け合うこと、みなが幸せに暮らせるかを中心に考えていきたいです。
卸価格は一緒
と同時にもう一つ大切に考えているのは、取扱い数量が多くても少なくても取引先によって卸価格を変えないということです。
卸価格になるには幾つかの規定(半年で50パックほど販売してもらうくらいの規定)があるのですが、それをクリアして卸契約をすればどんな規模のお店やスーパーも同じ卸価格です。
そうでなければ大きな組織の一人勝ちになってしまうのは目に見えています。その先にある社会に平等さや皆が幸せに暮らしている姿が僕には想像できません。
ただ大きいのが悪いという意味ではなく、独占して他を圧倒するような力に魅せられるのではなく、地域や一人一人の個人や、作る人や食べる人をきちんと意識した大きな組織に僕はとても魅力をかんじます。
東日本大震災の被災から数年たち、大幅な値上げなどもあり、多くの大きな会社が私たちから離れていきました。そんな時でも僕らを見捨てずに、今でもお付き合いしていただいている会社には本当に感謝の気持ちと尊敬の念がたえません。
数量が多いことのちょっとした特典として、余剰な原料在庫になりそうな時に対象商品が幾つかあるときはその中から選んでもらうとか、イベントがある時にすすんで参加するとか、そんなことはできる範囲でやるようにしています(とは言っても交通費など頂きますが・・・)。
食べる人への一番の貢献は
僕らがお客様にできるのは品質を落とさずに、欠品をせずに、あらゆる情報を公表し、そのうえで買いやすい価格を目指すこと。そこをシンプルに追求します。
僕らの会社の理念は「自分の家族や友人に食べてもらいたいと思うものを作る」です。それを継続できるような、自分には嘘をつかないようなそんな体制でこれからも頑張りたいと思っています。
大きな規模はもう考えない
こういった考えにかわったのは正直なところ東日本大震災の後です。被災を通して様々なことを考える中で、こうしなければ自分たちが会社を復興させる意味に自分の中での折り合いがつきませんでしたし、結果としては会社の再建は難しかったようにも思います。
ただ再建が進むと、会社の規模を大きくしたくなります。でも僕らはもうその方向を目指すのはやめました。自分が大切に思う考えを優先し、食べたいものを作り、小規模でいいから地道にやっていこうと決めたのです。
とても気持ちのよい日々を過ごしていますので、きっと間違っていなかったのだと思います。
自分たちの考えが正しいとか、生産者だけが偉いとか、もちろんそういうことを言いたいわけではありません。自分たちの体や心をつくる食べものを真剣に考えなおす時期なのではないか、とそんなことを考える日々です。常に自分たちの考えや行動を問いながら見つめながら地道に進んでいきます。
株式会社パプアニューギニア海産 工場長武藤北斗
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