昨年5月に一人のパート従業員が「むき作業」に✖(嫌い)をつけました。この「むき作業」は全作業の5割以上を担うメインの作業です。さすがにメイン作業を「やってはいけない」にすると問題が生じるような気がして、作業の流れによって「やったらダメを解除する」という何とも中途半端な決断をして10か月(詳細は「嫌いな作業をやってはいけない が崩れた」)。
どうも流れも雰囲気もよくない気がします。ルールが曖昧になることで、まず僕(工場長)と本人の意識の差が生まれ、そこから従業員同士が余計な気を使うなど、このままでは職場の空気が悪くなると判断しました。
大事なルールはぶれてはいけない
というわけで考えを改めました。例え5割以上の割合を占めるメイン作業だとしても、やはり「嫌いな仕事はやったらダメ」のような大事なルール(特に人間の根本の欲求に関わってくるような)に例外を作るのは問題のもとになる。だから例外はやめます。
ただ、「じゃあ例外はなし」とするだけでは無策すぎるというか、放り投げただけの無責任なリーダーだなと思います。今回で言えば「じゃあむき作業をやらずに、他の作業を自分で探してください」だけだと、メイン作業ができない彼女はまわりの従業員がやろうとしている仕事をドンドンと取ってしまい、軋轢が生まれるのは目に見えています。
そこで、これまでとは違う作業を一つ用意しました。
それは工場の外で行うシール貼りや賞味期限印字の作業です。シンプルな作業ですが、臨機応変にできる都合のよい仕事なのです。これまでは工場に人があふれた時、エビの解凍が間に合わない時などに社員に指示された人がたまに行っていた作業です。これを「むき作業」を✖にした彼女がやる仕事として追加することにしました。
あの人だけずるい
そうなると心配になるのが「あの人だけ特別なんてずるい」という感情です。これに関してはミーティングでみんなにも説明しましたが、「あの人」ではなく「むき作業に✖をした人」であって、むき作業に✖をすることは誰でもできるから一人だけへの特別扱いではありません。
もし同じような仕事の配置になりたいならば、むき作業に✖をつければいいだけの話です。僕は✖をつける理由を聞いたりしませんので、誰もが自由に✖をつけることができます。
完璧なルールなどない
僕は彼女が自分の嫌だという気持ちをきちんと表明し続けてくれたことに感謝しています。そして、本人にもミーティングでみんなにもハッキリ言っていますが、彼女はむき作業をやるのは向いていないし、集中力がすぐに切れてよいことがありません。だから✖をつけるというのは、本当に悪いことではなくて、逆に嫌いなことを嫌々やっているマイナスの雰囲気や集中していない動きの方が大きな問題なのです。
ハッキリと嫌いを表明し、それに会社が真摯に対応していくことはみんなにとってプラスであると僕は感じています。
今回の対応で流れがよくなるかは今の時点では僕らにも分かりません。このやり方を試すなかで何か見えてくると思いますのでその時にまた報告したいと思います。
これが完璧と思うルールはきっと一生出てこないだろうと思います。自分達にとってここちよい働き方を考えるのに終わりはないですから。
パプアニューギニア海産 武藤北斗
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