またちょっと思い違いがあったので説明したいと思います。
パプアニューギニア海産ではパートさんは嫌いな作業を『やってはいけない』という決まりがあります(詳細はこちらを)。
好きな作業に『◯』、嫌いな作業に『✖』、どちらでもなければ空欄というアンケートを年に数回とっていました。今年初めのアンケート結果が下の写真になります。
人は多様だから好き嫌いはそんなに偏らないし、まあ偏ったら順番にやればいいと思っています。大切なのは自分の意思を表明し、精神的・肉体的な苦痛が取り除かれることです。結果として効率もモチベーションも上がったのは必然かと思います。
これを5年ほど続けています。
でも実はここ1年ほど、なんだかしっくりこない感じがありました。
はじめた当初は嫌いな作業をやらなくてよいことに意識が向かっていました。しかし慣れてきて周りを見る余裕が出てくると、やはりどうしても他の人のことが気になってきます。
と、まるで人ごとのように書いていますが、特に気にしていたのは私です。社員はこの表に参加していないのに不思議なものです。
しかも気になるのが、✖に関わることではなく、◯に関わることなのです。『好きなら自分から動くはず』という考えがどんどん強くなっていました。ミーティングや面談でも〇なら率先して行うように繰り返し話をしていました。でもなんだか空回りしている感じがとても強かったです。
そしてコロナウィルス 対策で私が工場から出て、少し離れたところからゆっくり見守ることでやっと気づきました。『好きならやるべき』を押し付け、強要していたことを。
そもそも好き嫌い表というのは嫌いなことをやらないが重要で、苦しみから逃れることが目的なのです。
それなのにいつの間にか、好きを率先してやることが目的になってしまい、好きを押し付けられるというねじ曲がった苦しみが発生していた可能性があります。
さらに最近では、従業員同士で作業がうまく回るように、独占しないようにと話すことが多くなっていました。これ、好きを率先と相反したことを言ってます。反省です。
もちろん全部が悪かったわけではありません。
『嫌いな作業をやってはいけない』を始めた頃は、好きな作業を聞く必要がありました。今の日本では嫌いな作業をやらないということは、怠け者とか我儘とか負のイメージが強すぎます。
だから、自分の好きと人の好きは違う。自分の嫌いが人の好きであることなど珍しくない。それを◯と✖が混在する表で感じる必要があったのです。
しかし5年も経ちパプアニューギニア海産の中では嫌いを表明すること自体のハードルがそんなに高いものではなく、好きを表明する意味合いがいつの間にか消えていたのです。
苦しまないを継続するだけで良かったのに、なぜか 好きを率先する に意識が向かってしまいました。一時は好きをさらに分割し、大好きと好きの2つに分けていましたので、完全に自分を見失っていたようです。
そこで一つ変更します。
アンケートで嫌いは聞くけど、好きは聞かないことにします。これからは『好き嫌い表』ではなく、『嫌いな作業リスト』ですね。
今まで通り嫌いを申告した作業は『やってはいけない』。でも、好きかどうかは意識せず、工場全体がうまく回ることを考え動くことを優先していくのです。
一つ一つの作業の個人的な好き(好き嫌いではなく)も大切ではありますが、嫌いなことはやらない中で工場全体の作業がスムーズに流れる心地よさというのが、もしかするとそれを上回るのではと今は感じています。
そして2ヶ月に1回アンケートを取ることにしました。偶数月の月初めということまで決めました。
これまでは何ヶ月も同じアンケート結果を使っていることがありました。あんまり変わらないし、いいかなと。でも、アンケート結果がいつまで継続するのか分からければ不安だし、本心は書きにくいかもしれません。だから期間を明確に決めることでその不安をなくしていこうということです。
今回は私としては大きな変更です。争いのない職場を目指す中では、あまり好きを意識しない方がいいのではないか、そんなことを思い始めました。
パプアニューギニア海産・工場長 武藤北斗
従業員に説明した時のミーティング ↓