食品工場は作業に入るまでにたくさんの手順があります。白衣を着て、長靴に履き替え、前掛けをつけ、手を洗い、手袋をはめ、などと続きます。
ということは、作業を終え休憩に入る際はこれらを逆の手順で行うことになります。
手袋をとり、手を洗い、前掛けをはずし、靴に履き替え。。。時間にすると3分ほどでしょうか。この3分を休憩準備と名づけます。
今回、タイトルを『休憩前の数分を捨てる』としました。
当然ですが、この「捨てる数分」というのは、休憩準備の3分を従業員が捨てる(休憩中に行う)という意味ではありません。
休憩準備は作業と同じく仕事の一環ですから、給料を払うのが当然と考えます。ですから勤務時間内に行う必要があります。
では何を数分捨てるのか。
12時から休憩の場合、あなたの会社は何時に作業を終了しますか。仕事によって変わってくると思いますが、うちでは5分前の11時55分。重要なのは、まだ給料が発生している時間から休憩準備を始めることです(給料は12時ピッタリまで払います)。
3分で休憩準備が完了すると考えると、11時55分から58分の間で終わることになり、2分あまります。
どうしましょうこの2分。
数分でできる作業、簡単なふき掃除、やることはいろいろあります。チリも積もればで、毎日この数分を積み重ねれば大きな数字になることは間違いありません。
でも捨てます。
会社が休憩前の2分を捨てるのです。
時給で働くパート従業員にとって、というより時間を区切って働く人にとって、区切られた休憩時間は例え1分でもとても大切なものです。たかが数分、されど数分。私の感覚としては、朝の二度寝の次くらいに重要な数分です。
実際は会社が2分を捨てるというよりは、5分前に作業を終了し、昼休み開始の12時には休める体制に入れるということが重要です。
恥ずかしながらうちも以前は12時ピッタリに作業を終了し、そこから休憩準備をしました。既に休憩時間が開始していますから、従業員は手を洗う水道やスペースを取り合います。
争いの種を会社が作ってしまっていたのです。
現在は『まだ休憩は始まっていない』という心のゆとりもありますから、闘争心むき出しで取り合うようなことはなくなりました。
でも、少しでも早く工場から出たい気持ちは変わりませんから、休憩時間を自由にしたり、会社として更に工夫を重ねています。
この数分のおかげで気持ちよく休憩に入る事ができれば、休憩時間がとても心地よいものになるでしょう。逆に嫌な気持ちで始まった休憩時間はストレスが溜まっていくでしょう。それは従業員の精神上よくないのと同時に、明らかに午後の作業にも影響します。
いつも言うように、私が優しい人間だからではなく、会社の効率から考えても重要なことなのです。
この数分を経営者やリーダーがどう自分のこととして捉えることができるか。こういうことが働き方改革の一番大事な部分ではないかと思います。
チリも積もれば山となる。
それはストレスや人の心のすれ違いも同じなのです。