「サポートをしてはいけない」という新しい取り組み

 パプアニューギニア海産の武藤北斗です。「好きな日に出勤欠勤」「嫌いな仕事をやってはいけない」などの働き方についてはこちらを。

 先週、エビを選別しながらふと思ったんです。「あれっ、何となくずっとやってるけど、これって新しい取り組みなのかな?」と。そのことを報告します。

 それは「サポートをしてはいけない」です。

 サポートをすることは、通常は良いことだと思います。しかし、私たちの職場においては当てはまらないような気がしています。

 好きな日に出勤し、嫌いなことはやってはいけない。パート長や教育係が存在せず、時給は全員一緒。そんなふうに、パート従業員がみんな平等で自分の意思を尊重しやすい職場においては、「サポートされる」ことは、場合によってはストレスが生じてしまうのではないかと。

 そもそも僕は普通の社会で働いている時でさえ感じていました。人が好意で、気を利かしてやってくれていることにイラっとしている自分を。「いや、それ自分でやりたい」「あえてやってないんだから、余計なことしないで」と、自分のペースを乱されているような嫌な気持ちを。

 そんなことを面談で何度か話す中で、どうやらこれは僕特有の考えではないことにくわえ、うちのような働き方の職場にとっては「気を利かす行動」が実際にはマイナスの効果を生んでいる事に気づき始めました。

 そんなこともあり、ここ1年ほど僕は「人のことはやるな、自分のことだけやればいい」と言い続けていました。それは一言で分かりやすく言葉にすると「サポートをしたらダメ」ってことだと先週気づいたのです。

エビフライで具体例を説明

 あえてとても細かいことで説明します。

 エビフライを作るとき、①殻をむく⇒②串で背ワタを抜く⇒③包丁で切れ目を入れる と続きます。

 まず、①殻をむく を始める時にエビを入れるボールを取りに行くのですが、その時に、②で使うや③で使う包丁まで一緒に用意するのは「人のことをやる(サポートする)」に入ります。

 自分が背ワタを抜く時、包丁で切る時に道具を用意すればいいのです。細かいことのようですが、先に道具を持ってくるという行為はいろんな憶測も飛び交いやすいのです。

 「串を持ってきたってことは②も自分でやるのかな?私はやっていいのかな?」逆に「やってほしいから持ってきたのかな」、更には別の日は串を持ってこなければ「今日は持ってこない、あの人には持ってきたのに、私には持ってこないの?」みたいな話にもなってきます。こういったことで争いというものは起き始めるのです。

助けてあげたい時もあるのでは

 でもサポートというか、助けてあげたい時ってありますよね。例えば棚の上の道具が高すぎてとれない、重すぎて持てない、自分ができるならやってあげたいですよね。でもそれは、本来は誰もがとれる高さ、持てる重さにするべきであり、「みんながどうサポートするか」ではなく会社の制度をどう変えていくかという問題だと思います。

 人の多様性を認め合うとよく耳にします。それを職場で表現するならば、いろんなことを事実として受け止めて、そのことが問題にならないように、争いにならないように、もしくはいかしていけるように、制度や雰囲気を作っていくことなのかなと思っています。

 助ける、助けてもらうという意識すら出てこないような職場をめざしたいです。

 さて、気持ちの面ばかりを説明しましたが、もちろん肉体的な面にも影響があります。ここはサラッと書きますが、工場では同じ姿勢で長く作業することがあります。そんな時は、道具を取りにいったり、清掃をしたりと、ちょっと違う体の動きをすることは大事な気分転換であったり、固まった体をほぐすことになります。ですから好意であったとしても、何かを先回りしてやられることは自分が予定していた行動を奪われ、結果として同じ姿勢や作業が続くことで肉体的な苦痛に繋がってしまうのです。

サポートと効率

 もちろん気の利く人であったり、周りが良く見えている人もいるでしょう。精神的にも肉体的にも苦痛を与えずサポートできるような完璧な人。

 でもその完璧なパートさんは僕の経験から言うと、退職していくことになります。人間関係というのはとても複雑で難しいです。正しいことをするからといって好かれるわけでもないし、仕事ができるからといって慕われるわけでもない。

 ではどうしたらいいのか。

 僕なりの答えは、一人一人が他の人のことを気にせず、安心して自分の仕事に集中して一生懸命働ける環境を作るということです。

 そのために「人のことをやってはいけない」「サポートをしてはいけない」というルールが生まれてきたわけです。

 今までいろんな取り組みをしてきましたが、正直これが一番難しく難航しています。これまではどちらかというと、会社と従業員の間での改革が多かったのですが、今回はパートさん同士の細かな作業上の改革です。とても線引きが難しいですし、気持ちの問題を含んでいますので慎重になる必要もあります。

 でもやらなければ何も始まらないし、もしこれが間違った考えであったり、制度として成り立たない時は、その理由をきちんと説明して元に戻そうと思います。(今のところは難しいけれど、間違っている感触はないです)

最後に

 四苦八苦はしていますが、私が求めているのは平凡に淡々と仕事ができる職場なんだなと改めて感じています。人に気を使ったり、自分の居場所の確保に必死になるような職場にはしたくないのです。

 人をサポートするということは何なのか。もう少しじっくり考えたいと思います。

パプアニューギニア海産 武藤北斗

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