津波の直撃、生還、そしてあれからもうすぐ2年・・・
平成25年2月28日
株式会社パプアニューギニア海産
代表取締役 武 藤 優
私達日本人にとって忘れてはならない出来事、2011年3月11日東日本大震災。
地震及び津波被害により亡くなられました方々のご冥福を心よりお祈り致します。
津波の直撃を受けましたが、隣接する工場の屋根へと逃れ、そのまま、寒くて辛い一夜を過ごしながらも生かされた、あの日からもうすぐ2年が経ちます。多くの友人知人、更にお取引先の皆様からの温かいお言葉・ご支援等により、ここ大阪にて再起を図っています。工場設備等は、資金的な問題もあり、震災前の状態に戻るにはまだ道半ばですが、皆様のご愛顧という精神的な支えにより、将来に対して希望が持てそうな事業運営の基盤を整えつつあります。この場をお借りして、改めて感謝申し上げます。
(押し寄せる津波の第一波 2階事務所から撮影)写真の転用はご遠慮ください。
ご存知のように、津波により会社本体のみならず工場諸設備等の他、石巻に保管していた原料在庫・製品在庫の全てを失いました。震災直後は、茫然自失の状態で、何も考える事すら出来ない状況でしたが、運命の歯車は私たちに事業再建の道を選択させました。最大の難問であった資金調達に対しても、東日本大震災により被災した企業のための緊急融資枠が制度化され、少なからぬ助けとなりました。
とにもかくにも、この想定外の新たな借金を基に、パプアニューギニア(PNG)からの製品の買取りも昨年の暮れまでは継続する事が出来、生産者パートナーに対しても心配をかけずに済みました。然しながら、事務所も工場設備もゼロからの再出発であり、生産規模並びに販売数量が震災前の状態に戻るには、まだまだ時間が必要であり、昨年同時期のような原料確保に対する不安こそありませんが、本年6月以降に日本に到着する新物製品の買取り資金に対しては、正直なところ少々頭の痛い状況です。
近年では、養殖エビの大量搬入により中央卸売市場における天然エビの流通チャンネルが消滅してしまっているために、弊社による買取りが出来ない状態になると、PNG産の天然エビ自体が日本に来なくなる可能性も否定できないばかりでなく、PNGの生産者パートナーの事業存続も危ぶまれる状況にもなりそうです。私達は、PNGにおける水産業の育成と発展を目指して、これまで28年間やってきましたが、私達の努力だけではどうにも解決できない事態が迫りつつある気配が漂い始めています。生産者を支えるための買取り資金は、政府系或いは一般金融機関から普通に調達していましたが、震災後の本社移転により、それがゼロからの再スタートを余儀なくされました。もちろん、大阪においても新たな金融機関との間で同様の取組を開始し、前向きな対応を約束して頂いておりますが、その基となる事業計画の根拠としての販売数量予測に関しては、震災前の数字は実績としての評価を得る事が出来ないため、弊社の努力のみならず、お取引先の皆様及び一般のお客様の今後の動向がその命運を握っています。
弊社の存続自体ももちろん大きな問題ですが、同時にPNGの生産者の存続も大変に重要な課題だと考えています。消費する人々の健康被害等に関してよりも利益を優先しているとしか考えられないような養殖エビが日本中に溢れており、安心安全な天然エビ資源を有効に活用し、次の世代に受け継ぐ事が可能な「生産から消費に至るまともなシステム」は、私達以外には見当たりません。長年に渡る皆様との共同作業により誕生した、この貴重であり且つユニークなシステムを今後も継続・維持していくために、これまで以上の更なるご理解とご愛顧の輪を拡げて頂きたく、切にお願い申し上げます。
パプアニューギニア海産 お手紙(PDF)
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